研究紹介
メタン変換系の開発
1. 粉末系を用いたメタンのドライリフォーミング反応
豊富な資源であるメタンを、工業的に有用なガスである水素や一酸化炭素に改質する乾式改質反応は重要な技術です。改質に用いるガスは複数ありますが、中でも当研究室では二酸化炭素を用いる最難関の反応に取り組んでおります。これは、二酸化炭素を資源化する点でも重要な反応といえます。熱により反応を起こすこれまでの研究とは打って変わり、光触媒を用いることにより自然エネルギーをエネルギー源とすることを目指しております。
DRM reaction
複合光触媒 Rh/STO によるドライリフォーミング反応機構の模式図
2. 気相光電気化学システムによるメカニズム解析
光触媒の研究は本多・藤嶋効果と呼ばれる光電気化学的な水の分解が報告されてから、その実用性と活性の観点から粉末触媒へと拡大してきました。しかしながら、粉末触媒ではメディエータとなるイオン、光生成された電子・正孔及び反応サイトが混在しているためにメカニズムの解明が困難です。そこで、固体電解質をセパレータとして用いて気相光電気化学システムを構築し、反応場の分離からのアプローチで高性能光触媒の設計に向けたメカニズム解析に取り組んでいます。現在は酸素イオンを媒介としたメタンの乾式改質反応/水蒸気改質反応について研究を行っており、今後はプロトンなどの他のイオンを媒介とする反応に向けても本システムを展開していく予定です。
YSZ
(左)気相光電気化学(GPEC)システム
(右)気相光電気化学システムにおけるメタン乾式改質反応の反応モデル図
光機能材料の開発
1. ホウ化水素シート
二次元材料は大きな表面積を持つほか、機械的・電気的にもユニークな性質をもつものが多く、近年注目を集めています。当研究室では二ホウ化マグネシウム(MgB2)の剥離によって得られるホウ化水素シート(HBシート)について、その発明者でもある筑波大学の近藤剛弘先生のグループと共同研究を行っています。この材料は紫外線照射による水素放出現象や金属ナノ粒子を簡便につくる特異な還元能力を持つことが明らかになり、様々な応用が期待されています。
HB sheet
2. 光触媒を用いた物質変換反応
光触媒は太陽光を利用して有機物を分解し、あるいは、水から水素を生み出すことができます。しかし、活性の高い光触媒の大半は紫外線でしか機能せず、太陽光の主成分となる可視光が利用できていないのが現状です。当研究室では、可視光で機能する光触媒材料の開発に力を入れています。最近の研究では、界面の電荷移動プロセスという新しい原理を元にした環境浄化型光触媒、ならびに、混合原子価酸化物を用いた二酸化炭素の還元などに挑戦しています。これらの研究では、バルク及び界面の半導体制御、光電気化学、in-situ測定などを駆使しています。
Photomaterials
可視光で機能する光触媒材料のデザイン設計例・反応メカニズム
電気化学的な物質変換
1. 電気化学的二酸化炭素還元
電気化学は地球温暖化の原因である二酸化炭素の排出を抑えることのできる方策の実現に有望な方法です。私達は、再生可能エネルギーなどで発電した電力を用いて有用な化学原料へ変換する“電気化学的CO2還元”の電極材料や触媒の開発を行っています。 触媒として主に合金や硫化物に着目しており、より良い触媒開発を目指してそれら材料の結晶構造や形状、表面の状態などに注目して材料設計を行っています。 こうしたアプローチに加えて、より良い材料設計や触媒性能の予測を行うために、第一原理計算や機械学習といった計算科学にも取り組んでいます。
Electrolysis
2. 水熱電気化学による新規触媒合成
当研究室と東京工業大学地球生命研究所(ELSI)との共同研究によって水熱電気化学フローリアクタが作られました。この装置を用いて二酸化炭素還元や酸素発生といった電気化学反応に有用な新規触媒を合成することを研究しています。この装置は溶液の温度と圧力を独立に変化させることができるため、通常の合成では作製できない形態や相を持った触媒を作製できるのではないかと期待されています。
Hydrothermal Electrolysis
水熱電気化学フローリアクタ(初期型)